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【AI活用の死角】「商用利用OK」のAIで生成しても著作権がないのは当たり前? ~担当者が知るべき法的事実と3つの対応策~

2026-03-25

「生成AIの成果物には著作権がない」—このこと自体は、すでに広く知られるようになりました。にもかかわらず「商用利用OK」の有料AIツールで作っていれば自社の著作物として保護されるはずだと思っている方も多いのではないでしょうか。「商用利用OK」とは、ツール提供者が「商用利用してもあなたを訴えません」と言っているだけであり、成果物に著作権が発生することを保証するものではありません。

問題はその先にあります。「著作権がないことで具体的にどう困るのか?」そこまで把握できている方はどのくらいいるでしょうか。

例えば、自社のサービスやデザインが競合に模倣されたとき、通常であれば著作権をもとに差し止めを求めることもできます。しかしその成果物に著作権が発生していなければ、法的に争う根拠自体がないことになります。また、契約で著作権の移転を定めていても、そもそも権利が発生していなければその条項は機能しません。
このリスクは意外と見落とされがちです。

ベンダーに委託して納品されたコードやデザインなどの成果物、契約書に「著作権はクライアントに移転する」と書かれていても、AI生成物にそもそも著作権が発生していなければ、移転する権利自体が存在しない可能性があります。

このテーマを掘り下げて調べていくと、各国の公的機関の見解や判例が示す状況は、想像以上に入り組んだものでした。
この記事では、日米欧の公的機関の見解や最新の判例をもとに、「著作権がない」の先にある、担当者が知っておくべき法的事実を整理していきます。

<この記事でわかること>

  • AI生成物の著作権について、日米欧の公的機関がどのような見解を示しているか
  • 「商用利用OK」と「自社の著作物になる」の決定的な違い
  • 意図せず他者の著作権を侵害してしまうリスクとその事例
  • 企業が今のうちに確認しておきたい3つの対応策

AI生成物に著作権はあるのか — 日米欧の公的機関の見解を整理

まず前提として、「AIが作ったものに著作権は認められるのか」という問いに対して、各国の公的機関がどのような見解を示しているかを確認しておきましょう。

米国の事例:「プロンプトだけでは著作権は認められない」

米国著作権局は、2024年から2025年にかけて公開した「AIに関する調査報告書(Part 2)」において、プロンプトは原則として「アイデア」や「指示」に過ぎず、出力結果の表現を人間が「創造的に制御」しているとはみなせないため、原則として著作権保護の対象外であるとの見解を維持しています。

さらに「Thaler v. Perlmutter」事件では、連邦控訴裁判所においてもAIが自律的に生成した作品について「著作者は人間でなければならない」との判断が維持され、著作権は認められませんでした。

米国においては、AIだけで生成した成果物に著作権を主張するのは現時点では難しい、という方向性が示されています。

日本の見解:「人間の『創作的寄与』が必要」

日本では、文化庁が「AIと著作権に関する考え方について」という文書の中で、基本的な考え方を整理しています。

それによると、AIが自律的に生成したものには原則として著作権は認められず、人間による「創作的寄与」。具体的には加筆、修正、選択、構成といった創作的な関与があって初めて、著作物として認められる余地があるとされています。

欧州の動向:学習データの透明性を求める動き

欧州では、2025年8月から『EU AI法(AI Act)』のうち、ChatGPTなどの汎用AIモデルの提供者に対する規制条項の適用が開始されました。汎用AIモデルの提供者に対して、学習に使用したデータの詳細な要約を公開することが義務付けられています。

これは著作権の発生に直接関わるルールではありませんが、「中身のわからないAIをビジネスで使うリスク」を考えるうえで、押さえておきたい動向です。

これら事例のまとめ

日米欧いずれにおいても、「AIだけで作った成果物に著作権が自動的に発生する」とは言えない状況です。少なくとも、著作権が認められるには人間による何らかの創作的な関与が必要、という方向性は共通しています。

「商用利用OK」 ≠ 「自社の著作物になる」— よくある誤解

ここまでの内容を踏まえた上で、最も誤解しやすいポイントを整理します。

その「商用利用OK」が意味すること

多くの生成AIツールは「商用利用OK」を謳っています。これを見て、「有料プランで生成したものは自社の著作物として自由に使える」と理解される方もいるかもしれません。

しかし、ここには注意が必要です。冒頭でも述べましたが「商用利用OK」とは、あくまでツール提供者が「商用利用してもあなたを訴えません」という許可を出しているに過ぎません。この許可は、成果物に著作権が発生することを保証するものではありません。

判例が示す具体例:「Zarya of the Dawn」事件

この点を考える上で参考になるのが、米国著作権局が判断を下した「Zarya of the Dawn」事件です。
画像生成AIを使って制作されたコミック作品について、人間が書いたテキストや全体のレイアウト(構成)には著作権が認められました。しかし、AIが生成した個々の画像そのものについては著作権が明確に否定されています。

つまり、同じ作品の中でも「人間が作った部分」と「AIが作った部分」で著作権の有無が分かれたことになります。「作品単位」ではなく「パーツ単位」で判断されうるという事実は、調べていて驚いた点であり、ビジネスの現場においてもインパクトがある事例ではないでしょうか。

ソフトウェア分野でも同様の傾向

ソフトウェアの分野でも似た動きが出ています。
米国著作権局への登録事例では、IBMの『Watsonx Code Assistant』などのツールを用いて生成されたコードを含む著作物の登録において、AIが生成した部分を著作権保護の対象外として明示的に除外する運用が定着しています。

ビジネスの現場で起こりうること

これらを踏まえると、以下のようなリスクが考えられます。

  • 内製(自社でAIを使う場合)
    社員がAIにプロンプトを打って作成したデザインやコードは、人間の創作的寄与が認められなければ、著作権で保護されないリスク。
  • 外注(ベンダーに依頼する場合)
    導入でも触れた通り、ベンダーが開発時に活用したAI出力をそのまま、あるいは最小限の修正である場合、対象部分において契約書上の著作権移転条項が実質的に機能しないリスク。
  • 共通
    著作権で保護されない成果物は、競合他社にコピーされても法的に差し止めを求めることが困難になるというビジネスの独占性を失うリスク。
    自社のコアとなるシステムやデザインが、法的な保護を受けられないとしたら見過ごせない事態ではないでしょうか。

意図せず著作権を侵害する? — AI利用に伴うもう一つのリスク

ここまでは「成果物が自社のものにならないかもしれない」というリスクを見てきました。しかし、AI利用にはもう一つの側面があります。意図せず「他者の著作権を侵害する側」になるリスクです。

AIが学習元のコンテンツをそのまま出力する「リガージテーション」

調べている中でビジネスの観点で最も注意が必要と感じたのが、この問題です。

現在進行中の大型訴訟として、ニューヨーク・タイムズがOpenAIおよびMicrosoftを訴えた事例があります。この訴訟では、AIが学習元の記事を一言一句そのまま出力する現象(リガージテーション=吐き戻し)が証拠として提出されています。

利用者が元の記事を知らなくても、AIが既存の著作物と酷似した出力をしてしまうケースがありうるわけです。

「〇〇風で」という指示のリスク

日本においても、文化庁の指針(2024年3月公表)によって「類似性」と「依拠性」の基準が整理されました。これを受け実務上は、特定のクリエイター名を指示に含め、その結果として既存の具体的作品と表現上の本質的特徴が共通した場合には、AI生成物であっても著作権侵害を構成するという解釈が有力となっています。

「〇〇っぽい感じで作って」という何気ない指示が、意図せず著作権侵害を引き起こすリスクがあることを示す事例です。

検索連動型AI(RAG)をめぐる訴訟も

2025年には、日本の新聞各社がPerplexity AIに対して訴訟を起こしています。情報収集を拒否する設定(robots.txt等)を無視してコンテンツを利用しているとの主張です。AI活用の方法や範囲によっては、ツール提供者だけでなく利用する側も紛争に巻き込まれる可能性が指摘されています。

「AIが勝手に」は通用するのか

著作権侵害の責任を最終的に誰が負うのかという問題については、「成果物を利用した側が責任を問われる可能性がある」との指摘があります。

「AIが出力したものを使っただけ」「元ネタがあるとは知らなかった」という主張がどこまで通用するかは、現時点では判例の蓄積が十分とは言えず、不透明な部分が残っています。だからこそ、このリスクの存在自体を認識しておくことが大切です。

AI著作権リスクへの対応 — 企業が今確認しておきたい3つの対応策

ここまで見てきたリスクに対して、現時点で企業が取りうる一般的な対応策を整理します。
なお、以下は公開されている情報に基づく整理であり、個別の法的アドバイスではない点にご留意ください。

① 人間の「創作的寄与」を確保する

文化庁の考え方や米国著作権局の登録事例が示す通り、AI出力をそのまま使うのではなく、人間が加筆・修正・選択・最適化を行うことで、著作物として認められる余地が生まれます。

内製の場合も外注の場合も、「人間がどれだけ創作的に関与したか」が著作権の成否を左右する重要なポイントになると考えられています。

では、具体的にどの程度の関与が必要なのでしょうか。
明確な基準はまだ確立されていませんが、公的機関の見解や判例から見えている方向性はあります。

  • 著作権が認められにくいケース
    プロンプトを入力してAIの出力をそのまま使う行為は、現時点では著作権が認められない可能性が高いとされています。
  • 著作権が認められる方向性
    AI出力を「下書き」として活用し、人間が大幅にリライト・再構成する場合や、独自の構成で組み込む場合には認められる余地があります。

つまり、「何を変えたか」「なぜ変えたか」「どういう創作的判断を行ったか」を説明できるレベルの関与があるかどうかが、一つの目安と言えそうです。

② 補償条項(Indemnification)のあるツールを選定する

万が一、AI生成物が第三者の著作権を侵害していた場合に備えて、ツール提供者が法的費用を負担する「補償条項(Indemnification)」を設けているサービスがあります。

代表例として、Adobe Fireflyでは、商用利用可能な機能で生成されたコンテンツに対して、第三者からの知的財産権侵害の申し立てがあった場合に、Adobeが防御費用や損害賠償を負担するという補償が提供されています。これはFireflyの学習データが、権利関係が整理された素材をもとに構築されていることが背景にあります。

もちろん、すべてのリスクがカバーされるわけではありません。特に、補償の有無や条件が「エンタープライズ(法人)向けプラン」などの特定の契約に限定されているケースも多いため、自社が利用するプランで補償が有効かどうかを必ず確認しましょう。補償の適用条件や範囲はサービスによって異なるため、ツール選定時にこうした条件を確認しておくことは、リスク管理の有効な手段の一つです。

③ 外注時の契約で著作権関連の観点を確認する

開発やデザインを外部に発注する際、以下のような観点で契約内容を確認しておくことも一考に値します。

  • 著作権移転条項は、AI生成物にも有効に機能する前提で書かれているか
  • 納品物におけるAIの利用範囲・方法について、開示を求める条項があるか
  • AI利用に起因する第三者からの権利侵害の申し立てがあった場合、責任分担はどうなっているか

以上、これら3つの対応策は「こういう観点もあります」というものなので、実際の契約条件については、必要に応じて専門家にご相談されることをお勧めします。

完璧な正解はまだない

ここまで調べてきた上で言えることは、これらの対応策のいずれも「これをやれば完璧に安全」というものではない、ということです。AI関連の法整備は各国で進行中であり、今後ルールが変わる可能性も十分にあります。

まとめ

ここまでの内容を振り返ります。

  • 生成AIの成果物に著作権が認められるかどうかは、日米欧いずれにおいても「人間の創作的寄与」がどの程度あるかが鍵とされている
  • 「商用利用OK」は著作権の発生を保証するものではなく、著作権で保護されない成果物は、法的な差し止めが困難になりうる
  • AI利用に伴い、意図せず他者の著作権を侵害するリスクも複数の訴訟事例で報告されている
  • 「人間の関与の確保」「ツール選定時の補償条項の確認」「契約面の確認」といった対応策を講じておくことが望ましい

AI活用のメリットは大きい一方で、著作権面ではまだルールが固まりきっていない領域も多く残されています。「知らなかった」で想定外のリスクを抱え込まないためにも、こうした論点を押さえておくことが、今後のAI活用を安心して進めるための第一歩になるはずです。

テコテックでもシステム開発やデザイン制作の中でAIを活用する機会があるからこそ、今回整理したような論点や成果物の著作権リスクを踏まえた上で、開発支援に取り組んでいます。

「AI活用を前提とした開発を検討しているが、リスク面が気になる」「自社に最適な生成AIツールの導入と実務での活用の支援をしてほしい」といったご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。


筆者:TECOTEC++blog編集部

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